スイッチ
蝉の鳴き声で起きる朝。
群馬のおばあちゃんち。
隠れる場所がパターン化した缶蹴り。
母が茹でた枝豆をつまみにビールを飲む親父。
今年は夏がなかった。トロントもニューヨークもロスも十分暑かったのに、夏を過ごした感じが全くしないのだ。有意義な時間であったことは間違いないのだが、ビーチに行ったり、炎天下の中でサッカーをしても夏は感じない。暑いだけなのである。
いつ誰とどこで何をどのようになんてことを小学生の時に習ったが、季節ごとに習慣化された4W1Hは季節を感じさせるスイッチとなるらしい。具現化された風物詩だ。
高校生だった時は、練習後にチームメイトとグラウンドでキンキンに冷えた水を飲みながら「監督、おれたちのこと殺すつもりだろ」と談笑する瞬間が、夏の訪れをくっきりと照らしてくれた。
もちろん歳を重ねることで、環境と共にそのスイッチも変化していく。仕事終わりに飲むビールがよりおいしいと感じるようになるのが夏のスイッチになるかもしれないし、その導線はどんな些細な事にも繋がっている。金足農業の快進撃で盛り上がった今年の甲子園も、猛暑により問題視されている。様々なシュプレヒコールを耳にするが、あの光景を見れなくなってしまったら太陽のような大きな光を我々は失ってしまう気がする。とは言っても選手の健康が第一なので最善策を取ってほしい。
今から日本に帰る。平成最後の夏を取り戻しにいこう。暑い中、辛いラーメンにハイエナのように食いつき、汗をかき鼻水を垂らし、これだよこれ!!と言いながら水を一気に流し込みたい。