私の夏

思ったことを日々淡々と綴ります

カウントダウン

じゅー!きゅー!はち!なな!ろーく!

ごー!よん!さん!にー!いち!ぜろ!!!

聞き覚えのある効果音と共に大きな歓声が上がる。おめでとうございます!!スクリーンには興奮を隠しきれないリポーター。

カウントダウンが嫌いだ。

嫌いというより、怖いと言った方が正しいかもしれない。ただし、その数字の先にある対象が自分にとって楽しみにしているものである時に限るのだが、僕は途中で何かに、誰かに邪魔されそうで仕方がないのだ。1秒ずつのカウントダウンなら不安はすぐに過ぎ去って行くためまだ良いのだが、1日ずつのカウントダウンは耐え難い。

友人は僕を心配性だと言う。

僕もそう思う。ジェットコースターに乗る前は脱線したらどう生き延びようかを考えるし、飛行機が墜落することを考えて、少しでも生存確率が高い後部座席を指定する。昔からそうだ。昼ドラ「牡丹と薔薇」の第1話で、赤ちゃんが誘拐されるシーンがあった。それを見ていた6歳だった僕は、2階でスヤスヤ寝ていた当時0歳の妹が何者かに誘拐されていないか、蹴り上げの高い実家の階段を30分の間に何往復もした覚えがある。母はそんな僕を見て笑っていた。

でも不思議なことに不安になってる時そこ何も起こらない。玄関を出てから忘れ物しているのではないかと不安になっているときは、だいたい何も忘れていないのだ。今電車の中でiPhoneを落として壊してしまうかもしれないから、下書き保存しておこう。一回でも、こう思っておけば決して落とさないことを僕は知っている。一種の自己暗示に知らない間に頼っていたのだ。だから僕は大切な人との別れ際に一言付け足す。気をつけてね。

日本に帰るまであと10日。僕の中でカウントダウンが始まる。もし僕が奇跡的に成田の空港に着くことができたら、迎えに来てくれるあなたに大きな歓声を上げてほしい。僕は一人そっと胸を撫で下ろすだろう。

鈍感な男になれ

ロンドンに来て2週間

街は綺麗だし、人は暖かい。

要するに激アツファンタスティックエブリデイなのだ。(しゅうゲームズ)

 

しかし新しい環境にストレスはつきもの。

なんだかハゲてきた?ロンドンの硬水のせいか、歯にコーヒーと紅茶のステインがついた?いやこれは虫歯か?なんて心配性の僕に、家族から衝撃の一言。

 

「もっと鈍感に生きろ」

 

“鈍感に生きる”とはどういうことか。

難しい。

ハゲかけたおじさんが、これは気のせいだ!?!なんて言ってたら3年後には髪はなくなるだろうし、なんか焦げ臭いぞ?いや気のせい気のせい!!なんて言ってたら火事だらけになる。長州さんがドッキリにキレて大変です!ええい!そんなの気のせいだ、こっからもう一つのドッキリを仕掛けろ!なんてやってたら、リキラリアットで日本人は絶滅するだろう。

鈍感に生きる。

専ら見当がつかない。

 

人々は言う「ポジティブに生きろ」

 

“ポジティブに生きる”とはなんぞや。

髪の毛が後退してきた?バカ言え、俺が前進しているんだ。なんか焦げ臭いよお父さん。この匂いも楽しめ息子よ。長州さんが怒っています!!え、でも何言ってるか聞き取れないから気にしなくていいでしょ?

これもまた違う気がする。

 

男は言う「がっきーと結婚したい」

人々は言う「現実を見ろ」

“現実を見る”

これは分かる気がする。

ハゲのおじさんががっきーと結婚できるわけがないし、俺が前進しているんだ?そもそも意味が分からない。早く湘南美容外科クリニックに通ってくれ。

 

しかしこれは、夢を諦めた大人の常套句だ。

 

人生は変えられる。

 

怪しいビジネスではありません。

セミナーに参加しませんか?

 

ロンドン塔の前で1人寂しくブログを書いてると、手がかじかんできた。

 

何が言いたいかというと、旅路(夢中飛行)、人生のメリーゴーランド、海の見える街、Norwegian Woodを聴きながら街を歩くと幸せになれますよ。

 

 

スイッチ

蝉の鳴き声で起きる朝。

群馬のおばあちゃんち。

冷やし中華を啜りながら見る笑っていいとも!

隠れる場所がパターン化した缶蹴り。

母が茹でた枝豆をつまみにビールを飲む親父。

 


今年は夏がなかった。トロントもニューヨークもロスも十分暑かったのに、夏を過ごした感じが全くしないのだ。有意義な時間であったことは間違いないのだが、ビーチに行ったり、炎天下の中でサッカーをしても夏は感じない。暑いだけなのである。

 

いつ誰とどこで何をどのようになんてことを小学生の時に習ったが、季節ごとに習慣化された4W1Hは季節を感じさせるスイッチとなるらしい。具現化された風物詩だ。

高校生だった時は、練習後にチームメイトとグラウンドでキンキンに冷えた水を飲みながら「監督、おれたちのこと殺すつもりだろ」と談笑する瞬間が、夏の訪れをくっきりと照らしてくれた。

 

もちろん歳を重ねることで、環境と共にそのスイッチも変化していく。仕事終わりに飲むビールがよりおいしいと感じるようになるのが夏のスイッチになるかもしれないし、その導線はどんな些細な事にも繋がっている。金足農業の快進撃で盛り上がった今年の甲子園も、猛暑により問題視されている。様々なシュプレヒコールを耳にするが、あの光景を見れなくなってしまったら太陽のような大きな光を我々は失ってしまう気がする。とは言っても選手の健康が第一なので最善策を取ってほしい。

 

今から日本に帰る。平成最後の夏を取り戻しにいこう。暑い中、辛いラーメンにハイエナのように食いつき、汗をかき鼻水を垂らし、これだよこれ!!と言いながら水を一気に流し込みたい。

ニューヨーク

思ってもいなかった。

まさか泣くなんて。

 

ニューヨークに来て2日目。

エンパイアステートビルメトロポリタン美術館など色々回った。街を歩いているだけでNYにいることを実感できるくらい、マンハッタンは活気に溢れている。しかし感動を共有できる人間が近くにいないのは、なんだか寂しい。一人旅の方が自由に動けるから~と言う人をたまに見るが、自分はその類の人間ではないと実感する。また、エレベーターで一緒になっただけのフランス人に振り回されたり、ルームメイトのモデルしてるドイツの女の子の裸を危うく見そうになったり、非日常にハプニングが重なると脳は処理に時間がかかるらしい。昨日は丸太のようになって寝た。

 

今日は旅のメインであるブロードウェイでのミュージカル鑑賞。どうせなら1番のロングラン作品を観たいと思い、「オペラ座の怪人」を選んだ。ヘビーウェイトのTシャツにサンダルは場違いな気がしたので、行く前にドミトリーに寄ってからポロシャツに着替え革靴に履き替える。部屋に戻るとルームメイトのアルゼンチン人も化粧を直しドレスに着替えていたので、おそらく彼女もミュージカルを観に行くに違いない。外は湿度が高く風も強くなってきたので、折りたたみ傘を鞄に詰めてから出発しよう。

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終わった。想像以上だった。この感情をうまく表現しようとすると長くなるので割愛するが、本当にすごい。目の前で行われている壮大な演戯に自然と瞳孔が開き、耳を澄まし、鳥肌が立ち、心が揺さられ、目頭が熱くなる。誰かのブラボー!の声を合図に全員でスタンディングオベーション。観客の熱気はスイングガールズのだめカンタービレ以上だった。(上野樹里のファンというわけではない)立って拍手をするという動きに不慣れな僕も最大限の賛辞を送る。カーテンコール後はカップルが抱き合っていたりと、辺りが満面の笑みに溢れて劇場全体が幸せに包まれていた。

 

綾部がNYに拘る理由が何となく分かる気がする。歴史や文化は浅くても、夢追い人が世界から集まっているのがNYだ。その中でも人の心をこれだけ直接的に動かせる仕事は、他を探してもあまりないだろう。僕も将来そんな仕事をしたいと思いながら席を後にする。外は雨が降っていた。

The Beatlesと尾崎豊と鞘師里保

かつて存在した時代や人のほうが、現に存在しているものより優れているという幻想は、あらゆる時代に流れているものである。

僕は小学生の頃、暑い日におやじの車で買い物に行くことが好きだった。どちらが前に座るか、姉と毎回じゃんけんをして決めていた記憶が蘇る。たかがマーチの助手席でも、小学生の僕にとっては優越感に浸れる特等席だったらしい。行き先はスーパーとホームセンター。おやじが僕を連れて行ってくれる場所はだいたい決まっている。冷房の効きが悪いので、レギュレータハンドルをぐるぐる回転させて窓を開けた。心地よい風を感じながら、おやじの好きなビートルズと尾崎の曲がシャッフルされて流れてくる。英語も尾崎も知らなかったのに、なぜか好きだった。その影響で中高生の頃は、デスクトップでビートルズと尾崎の動画を漁った。

 

僕は今日、YouTubeで「鞘師里保」と検索する。7年前のムーンライトの動画でも1080pで見れるのだから現代のネットには感謝しかない。

なぜ鞘師に興味を持つようになったかというのは、彼女の魅力を熱く語る松岡茉優を見てからだ。松岡茉優の動画をクリックしたあの時の自分を褒めたいと思う。目が大きいとか鼻が高いとか、特別な美人ではないのになぜかずっと見てしまう。鞘師がエースと呼ばれるまで時間がかからなかったように、僕は彼女の魅力にすぐにのめり込んでいった。

しかし僕が見ているのは鞘師里保の過去でしかない。彼女は2015年にモーニング娘。を卒業して以来メディアに顔を出さない。周りの友人たちがbuck number や乃木坂のライブに行ってる中、僕は買ったばかりのiPhone8と見つめ合っている。結局大学生になった今でも、誰かのライブに行ったことはないし、僕が好きな歌手はもう画面でしか見ることができない。

 

ビートルズも尾崎も鞘師も若くして第一線から退いた。過去は美化される。さらに真実が明らかになっていない過去はなおさら人々の好奇心を誘う。ビートルズ解散の理由も尾崎の死因も、鞘師はなぜあのタイミングで卒業したのかも。僕たちは勝手な憶測で物事を決めるのが大好きな生き物だ。そこには「憂い」というキーワードが共通して存在しているのも興味深い。

 

僕は来週ニューヨークへ行く。ジョンレノンが殺害され、尾崎と鞘師が留学した地だ。セントラルパークの近くの宿を探していたら、ふとおやじの車で流れていたビートルズの「Strawberry Fields Forever」が脳内で再生された。

Let me take you down Cause I’m going to Strawberry Fields
Nothing is real and nothing to get hung about Strawberry Fields forever

君を連れて行かせてくれ
僕はストロベリーフィールドに行かなきゃいけないから
真実はどこにもないし心配事も何もないよ
ストロベリー・フィールドよ永遠に

Living is easy with eyes closed
Misunderstanding all you see
It’s getting hard to be someone
But it all works out
It doesn’t matter much to me

目を閉じながら生きていく方が簡単なんだよ
見えているものは全て幻想だから
何かになるってのは、大変なこと
でもなんとかなるさ
僕にとってはどうでもいいことだけどね

 

僕がYouTubeで見ている過去の映像は、時間と共に美化され、勝手な憶測から幻想へと変化しつつある。その経験は生まれてから20年間でたくさんしてきた。そろそろ同じ時間軸の中に僕を連れて行ってほしい。