私の夏

思ったことを日々淡々と綴ります

カウントダウン

じゅー!きゅー!はち!なな!ろーく!

ごー!よん!さん!にー!いち!ぜろ!!!

聞き覚えのある効果音と共に大きな歓声が上がる。おめでとうございます!!スクリーンには興奮を隠しきれないリポーター。

カウントダウンが嫌いだ。

嫌いというより、怖いと言った方が正しいかもしれない。ただし、その数字の先にある対象が自分にとって楽しみにしているものである時に限るのだが、僕は途中で何かに、誰かに邪魔されそうで仕方がないのだ。1秒ずつのカウントダウンなら不安はすぐに過ぎ去って行くためまだ良いのだが、1日ずつのカウントダウンは耐え難い。

友人は僕を心配性だと言う。

僕もそう思う。ジェットコースターに乗る前は脱線したらどう生き延びようかを考えるし、飛行機が墜落することを考えて、少しでも生存確率が高い後部座席を指定する。昔からそうだ。昼ドラ「牡丹と薔薇」の第1話で、赤ちゃんが誘拐されるシーンがあった。それを見ていた6歳だった僕は、2階でスヤスヤ寝ていた当時0歳の妹が何者かに誘拐されていないか、蹴り上げの高い実家の階段を30分の間に何往復もした覚えがある。母はそんな僕を見て笑っていた。

でも不思議なことに不安になってる時そこ何も起こらない。玄関を出てから忘れ物しているのではないかと不安になっているときは、だいたい何も忘れていないのだ。今電車の中でiPhoneを落として壊してしまうかもしれないから、下書き保存しておこう。一回でも、こう思っておけば決して落とさないことを僕は知っている。一種の自己暗示に知らない間に頼っていたのだ。だから僕は大切な人との別れ際に一言付け足す。気をつけてね。

日本に帰るまであと10日。僕の中でカウントダウンが始まる。もし僕が奇跡的に成田の空港に着くことができたら、迎えに来てくれるあなたに大きな歓声を上げてほしい。僕は一人そっと胸を撫で下ろすだろう。